5人の演者全ての人が内容の濃い、わかりやすい話をしてくださったので、1日があっという間に過ぎ去った。この会は旧植物分類地理学会講演会のよき伝統を生かして再出発したのだ、ということが私の胸によく伝わってきました。プロとアマの協力、共同の場として発展してきた伝統を継承した会になったと思います。お世話していただいた大阪市立自然史博物館のスタッフの皆様に感謝します。
3倍体で実を付けないヤブガラシがいかにして日本全土に分布を広げたのか?岡本氏の話は「ミステリー」を聞いている心地であった。ヤブガラシの情報提供をインターネットで呼びかけたところ、思いもかけない未知の人からの連絡が相次ぎ、大いに調査が進んだそうである。私は個人なのでホームページは持っていないけれど、そう言ったこともこれからは取り入れていかなあかんな、と思った。
外部形態では全く区腹できないがDNAやアイソザイム解析から日本産のヒメジャゴケには北海道南部を境界にしてN型とS型の2種に分けることができそうだという美和氏の話はこれまでの分類学の常識を覆す考え方で美和氏の若さとあいまって新しい時代の訪れを実感させられた。私は今ミヤマカンスゲを調べているが美和氏の示された地域(北海道南部)を境にそれより北にはこのスゲは分布していないのでよく理解できた。
生物の種を考える時、その実体に即した分け方をするべきだという村上氏はその調査方法として@DNA解析、A交配実験、Bアイソザイム、C生育状況(環境)の観察などを挙げておられた。そのどれを取ってみても研究機関に職を持っていない我々には大変なことであるが、少しでも工夫して挑戦したいものだ、また共同研究などの方法で補足することも可能ではないかと思った。
植物学用語が日本に入ってきた歴史を宇田川榕庵の「菩多尼訶経」(1882)の実物(復刻版?)など多数の書籍を持参されて解説してくださった北川氏の話はこれまで多くの新種を書かれ、植物用語に実践的に苦闘されてこられた氏の経験から来る迫力があった。
GISなるインターネットと地図ソフトとExcelを組み合わした植物の情報入手方法や研究への活用法の紹介をしてくださった高野氏と三橋氏の話はとても魅力的であったが、パソコン嫌いの私たち団塊世代のものには厳しかった。でも、なんとか緯度経度を入力すれば分布地図が描けるという所くらいはマスターしたいものだと心に言い聞かせたものでした。
総じて、研究技術は日進月歩であり、ついていくのは大変であるけれども、何とか頑張って行こうと言うのが感想である。「なんだかんだといってもやはり一番大切なことは植物を見る目だ」と言って下さった田村氏(大阪市立大学)の一言に夢を託して!!