2003年度日本植物分類学会講演会記録
昨年度の講演会は12月14日に神戸市の頌栄短期大学で開催しました。演題を兵庫県の植物相に絞って、次のかたがたに講演していただきました:三宅慎也(神戸森林植物園)「六甲山の植物」、高橋晃(兵庫県博)「溜池(西脇市)周辺にみられる植物の今と昔」、小林禧樹(兵庫健康環境センター)「兵庫県産テンナンショウ属」、黒崎史平(頌栄短大)「兵庫県レッドデータ−ブック」。最後に北川尚史(奈良産業大学)氏に「ヒメジャゴケについて」講演いただきました。参加者は45名でした。いつも思っていることですが、広報の方法に工夫が必要です。
講演終了後、頌栄で懇親会をもちました。立食形式が幸いしたのか、会話が盛り上がりました。この程度でよかろうと用意していた飲み物が、あっという間になくなりました。
足と目の成旺
「前座ですから」で始めた三宅さん、「そんなひがまんと」とすかさず突っこむ福岡先生、さすが関西、頌栄での講演会の幕開けである。
するどい視線で六甲山地をくまなく歩かれた三宅さんは、きれいなスライドでフロラの特徴を解説された。圧巻は直前に得られたオオクボシダの回覧で、実に四半世紀ぶりの再確認であった。
昔の標本を生かす
50年前、西脇市の天神池で田中兼治氏が採集された標本が整理されたのを機に、高橋さんたちがその後のフロラ変遷を知ろうと同地を再調査された。
当時採集された草原性種はすでになく、湿地性の種も一部しか残っていなかったという。しかし近隣では分布西限の更新となったクロミノニシゴリほか、いくつか注目すべき種が発見された。
目の保養
小林さんは兵庫県産テンナンショウ属の分類や地理分布をまとめて解説された。とくに近年に再発見されたセッピコテンナンショウの多数の滋真は、目の保養になった。雄花にくらべて雌花の花梗が長いこと、葉は2枚になる場合があることなど、重要な知見もあわせて披露された。
ハーバリウム命
兵庫県は2003年にレッドデータブックを改訂したが、黒崎さんは新版でランクが変わった理由を種ごとに解説された。
フロラを調べる人が増えたり、環境調査からもたらされる標本が増えたことなどが改訂に役立ったとされ、標本庫の充実こそが信頼できるレッドデータブックの基礎だと強調された。
さて真打ちは
北川先生といえば最後の分類地理学会の講演を思い出す。話は枕だけに終わったが、「分類学者は退職後に新種を書いてはいけない」などなど。今回もひそかに期待したのだが、ヒメジャゴケからあまり脱線することはなかった。風邪気味で調子がよろしくなかったとのこと、次回に期待しよう。
大団円
講演終了後、実習室での懇親会は学生コンパの趣で、あちこちに人の輪ができ、話がはずんだ。福岡先生はじめ、お世話いただいたみなさま方に感謝します。
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