日本学術会議のあり方についてのコメント
2002.12.3 日本植物分類学会
1(総論)。日本学術会議のあり方について、専門調査会の11回の会議を経て作成された中間まとめは科学者コミュニティの代表としての日本学術会議の役割を適切に述べている。それを実現するための日本学術会議の機能、組織・機構、設置運営形態等、などについては、機能、組織・機構に比べて設置運営形態等は「引き続き検討する」(第5章)という表現にとどまり、バランスを欠いていることは否めない。設置運営形態は日本学術会議のあり方に関わる重要問題であるので、この段階で具体的であるべきである。

2(各論)。第3章(3)で「日本学術会議は、ボトムアップ的に科学者の意見を広く集約し、科学者の視点から中立的に政策提言を行う役割をになう。」とあり、会員は「科学の第一線の状況をよく知る研究者を中心に・・・」「現会員による選出」(第4章1)方法を採るとしている。このような選出方法は、現行会員の意見を意識的に申し送りするだけの硬直した組織が形成される危険性があり、科学者の意見を広く集める媒体が学会など研究者集団であることを考慮すると、有効な方法とはいえず、日本学術会議と学会の関係を現状よりもさらに遊離させるものと判断される。「第一線の状況をよく知る研究者」とは同類分野の多くの研究者であり、一部の研究者や異分野の研究者ではないであろう。課題に応じて連携会員を学会等の推薦を踏まえて選ぶ(同2)とするが、このような二重構造は日本学術会議と学会の関係をかえって弱めるもとである。われわれ日本植物分類学会は地球環境にとって生物多様性が重要な役割を果たす常識を念頭に、絶滅危惧植物、移入植物問題などについて積極的に取り組んでおり、社会に対して現状と予想される結果の情報を提供している。とりわけ、絶滅危惧植物問題では環境省発行のレッドデータブックの出版にも協力しているが、活動の効果をあげるためには、日本学術会議の活動などを通じて行うことが必要である。日本学術会議と研究団体である学会は今の状態より緊密な関係を築くべきであり、そのために会員数を大幅に増やし、会員を役割分担させる日本学術会議案の方が有効であると判断される。
 第5章の設置運営形態等について。日本学術会議を学会と同列視する向きもあるようだが、日本学術会議は本「中間まとめ」に謳っているように研究者の意見集約、対社会情報提供、政策提言を主要任務とする国家的あるいは国の代表的な機関である。日本学術会議が社会から高い評価を受ける存在であるべきということを前提にすると、国の機関である現状を変更すべき根拠は見あたらないと考える。